尊厳死とは

尊厳死とは,ガン等の回復の見込みがない重篤な病気のため末期状態にある患者につき,生命維持装置等による延命のためだけの治療を中止し,人間としての尊厳のもと,生きることに終止符を打つことをいいいます。

もともと、現代の医学は患者が生きている限り最後まで治療を施すという考え方のもとに,少しでも長く生を保たせ,最後まで治療を施すための技術を進歩させてきました。

実際、時に奇跡的な回復の例がないわけではありません。

しかし,延命治療が結果として患者を苦しめ,安らかな死を迎えることを阻害するだけに終わることが多いのも事実です。

そして近年,個人の自己決定権を尊重する考え方がいろいろな方面で力を得てきました。

医学の分野においても,治療方針や手術のリスクなどについて十分な情報を提供し,これに基づく患者の選択を重視する考え方が主流となっています。
患者本人としても,少しでも長生きしたいというのは本能ですが,もし自分が回復の見込みがない末期状態に陥ったときには,機械に生かされているような情けない状況を回避したい,また,過剰な末期治療による家族への精神的経済的な負担や公的医療保険などに与える社会的な損失を避けたい,という考えを持つ人が増えてきたようです。

なお、多くの方が混同されているようですが、安楽死と尊厳死とは以って非なるものです。安楽死とは、助かる見込みがないのに、耐え難い苦痛から逃れることもできない患者の自発的要請にこたえて、医師が積極的な医療行為によって(筋弛緩剤や麻薬の投与など)患者を早く死なせることです。つまり、患者の死亡に関して医師の積極的関与があるかどうかが異なるということです。現在わが国では安楽死を認めていませんので、どのような手段でもこれを求めることはできません。

尊厳死宣言公正証書とは

 尊厳死宣言がされている場合に、自己決定権に基づく患者の指示が尊重されるべきものであることは当然としても、医療現場ではそれに必ず従わなければならないとまでは未だ考えられていないこと、治療義務(というか必要性)がない過剰な延命治療に当たるか否かは医学的判断によらざるを得ない面があることなどからすると、尊厳死宣言公正証書を作成した場合にも必ず尊厳死が実現するとは限りません。つまり、治る可能性のある治療と延命治療は重なる部分が多いのです。

  ただ、尊厳死の普及を目的している日本尊厳死協会のアンケート結果によれば、「尊厳死の宣言書」を医師に示したことによる医師の尊厳死許容率は、90パーセント以上に及んでおり、このことからすると、医療現場でも、大勢としては、尊厳死を容認する傾向にあるといえます。いずれにしろ、尊厳死を迎える状況になる以前に、担当医師などに尊厳死宣言公正証書を示す必要がありますので、その意思を伝えるにふさわしい信頼できる肉親などに尊厳死宣言公正証書をあらかじめ託しておかれるのがよいのではないかと思われます。

 ただ、注意すべきはせっかく尊厳死宣言をしても自筆証書遺言や他の書面に書いただけでは書いた本人の真意を担保できないとして尊厳死(延命治療拒否)宣言と扱われないことがあるということです。そうするとせっかく作成した尊厳死宣言も役に立たなくなってしまいます。

そこで、尊厳死宣言を公正証書にすることが重要になるのです。


 

尊厳死宣言公正証書の見本(サンプル)

参考までに、尊厳死宣言公正証書の見本(サンプル)を掲載いたします。ただし、これはあくまで参考であり、実際には個別のケース応じたものを作成する必要があります。

 

尊厳死宣言公正証書(見本・サンプル)

本公証人は、尊厳死宣言者田中一郎の嘱託により、平成24年1月16日、その陳述内容が嘱託人の真意であることを確認の上、宣言に関する陳述の趣旨を録取し、この証書を作成する。

第1条 私田中一郎は、私が将来病気に罹り、それが不治であり、かつ、死期が迫っている場合に備えて、私の家族及び私の医療に携わっている方々に以下の要望を宣言します。

1 私の疾病が現在の医学では不治の状態に陥り既に死期が迫っていると担当医を含む2名以上の医師により診断された場合には、死期を延ばすためだけの延命措置は一切行わないでください。

2 しかし、私の苦痛を和らげる処置は最大限実施してください。そのために、麻薬などの副作用により死亡時期が早まったとしてもかまいません。

第2条 この証書の作成に当たっては、あらかじめ私の家族である次の者の了解を得ております。

妻   田中和江   昭和  年 月 日生

長男  田中次郎   平成  年 月 日生

長女  佐藤香苗   平成  年 月 日生

私に前条の病状が発生したときは、医師も家族も私の意思に従い、私が人間として尊厳を保った安らかな死を迎えることができるよう御配慮ください。

第3条 私のこの宣言による要望を忠実に果して下さる方々に深く感謝申し上げます。そして、その方々が私の要望に従ってされた行為の一切の責任は、私自身にあります。警察、検察の関係者におかれましては、私の家族や医師が私の意思に沿った行動を執ったことにより、これら方々に対する犯罪捜査や訴追の対象とすることのないよう特にお願いします。

第4条 この宣言は、私の精神が健全な状態にあるときにしたものであります。したがって、私の精神が健全な状態にあるときに私自身が撤回しない限り、その効力を持続するものであることを明らかにしておきます。

 

 

業務報酬・費用等

当事務所では、尊厳死宣言公正証書についての作成を代行しています。個別具体的な事情を盛り込んだしっかりとした尊厳死宣言公正証書を作成したいとお考えの方は、まずはご相談ください。

 

尊厳死宣言公正証書代行サービス:5万円(税別)

 

尊厳死宣言公正証書の作成についてのお申し込み、ご相談は・・・・

TEL:06-6375-2313
フロンティア総合国際法務事務所 まで!