公正証書作成のメリット

 

公正証書を作成すると、公証人役場に払う費用が発生します。また、公証役場に出向く必要もありますので時間もとられます。

でも、公正証書を作成すると、メリットがあるんです!

実際に、ざわざお金を掛けて公正証書を作成するメリット(利点)は、次のようなものが考えられます。

 

高い証拠力のため、裁判時に有利

日本人は裁判が嫌いです。そのため、これまでは多くの日本人の傾向として、裁判を避けてきました。「まぁまぁ、何とか」ということで問題解決を先送りにしてきたのです。

しかし最近では、譲り合いが少なくなり、権利だけを主張する世の中となりつつあります。話し合いが付かなければ裁判をしよう、ということになるのです。ロースクールができ、弁護士も増員されましたので、今後、日本もアメリカなどのように訴訟社会となるかもしれません。

では、裁判をする上で大事なことは何でしょうか?

裁判で一番大切なのは「証拠」です。そして裁判では権利を主張する者がその証拠を提出し、主張が正しいことを立証する義務があります。

例えば、お金を貸した、返したという争いであれば、契約書や領収書等を証拠として提出する必要があります。

しかし、契約書や領収書は後から偽造したり、なくなったりすることもあります。また、印鑑や署名が他人のものかもしれません。

そこで、公正証書作成の出番です。

公正証書とは、公証人が作成した公文書なので証拠力が高いのです。偽造の可能性は皆無と言ってよいでしょう。
つまり、公正証書で契約書を作成しておけば、裁判所で借りた覚えはないとか、偽造されたのではないかという主張は事実上できないのです。

このように、証拠力が高いため、裁判で有利となるというのが、公正証書のメリットの一つです。


執行力があるため、取りはぐれがない

執行力とは、裁判所を通じて給料や預金などの差押え(強制執行)ができることです。

例えばお金を払ってくれない人がいたとします。口頭や手紙で請求しても無視され、全く効果がない場合も多いです。

しかし前もって、公証役場で公正証書を作成して、手続(執行文の付与)をしておくと、給与の一部や相手の財産等の差押えが直ちにできます。

これは非常に大きなメリットです。

実際、公正証書ではなく、私製の契約書での金銭貸付をしていた場合には、差押えの手続が面倒です。

どれほど面倒かは次の通りです。

まず、支払がない場合は裁判所に訴訟を提起します。そして勝訴判決を得た後に判決が確定したら、ようやく差押えができるということになります。場合によっては、裁判を弁護士に依頼しなければならないでしょう。弁護士費用は相当高いです。また判決まで日数も数か月掛かることは普通ですので、すぐに債権回収はできません。。さらに勝てるかどうか不安となり、その間の精神的なストレスも相当なものでしょう。日数だけが経過している間に、他の債権者が先に回収してしまえば、こちらは裁判で勝っても何も差押え(回収)するものがなかったということも考えられます。

このように、執行力があるので、債権を効率的に回収できるのが、公正証書のメリットの2つ目です。

 


無効になったりせず、安全である

一般に、出費を惜しんで素人が作成した私文書は、法律に反していたりして、後から裁判などで無効とされる場合がよくあります。

しかし、公正証書を作成する場合は、事前に法律に詳しい公証人が内容が法律等に違反していないかチェックします。つまり、作成された公正証書が法律に違反していたり、公序良俗(世間一般の常識)に反して無効になったりすることはほとんどありません。

また、仮に素人が有効な契約書を作れたとしても、長い年月がたつと、契約書をなくしてしまうこともあります。

しかし、契約書作成された公正証書は、原本(契約書そのもの)を公証役場で原則20年間保管します。

なので、契約書や遺言を公正証書で作成した後、本人が公正証書の控え(正本や謄本)を紛失した場合でも、その写し(謄本)をいつでも再発行が可能です。

つまり、公証役場は銀行の貸金庫のように、公正証書を厳重に保管してくれるのです。貸金庫なら有料ですが、公証役場の保管料は要りません。このような意味でも、公正証書は安全であるということになります。

公正証書遺言